いつも窓に向かいあう席を愛用している最寄りのマクドナルド。二階からの景色を楽しみながら不節制な昼食を楽しむのが、週に一度の決まった外出なのです。
テレワークとは恐ろしいもので、こうでもしないと本当に引き籠もってしまうのです。
ところが今日は、全体的に見て店内の客の数は少ないものの、窓前の席だけは人で埋まっていました。
仕方がないので、他の客とも向かい合うことになる長テーブルの席に座ることにしました。小テーブル二つ合わせた四人掛け席も空いていたのですが、そこを遠慮するのが私の小者たる所以なのです。
お昼時ということもあり、しばらくすると店内が混んできす。すると、斜め前の席に長身のアメリカ人が座りました。本当の国籍は不明ですが、マクドに欧米人がいれば、俺の目にはすべてアメリカ人として認識されるのです。まぁ昭和を生きた日本人はみなそんなものでしょう。
じつはこのアメリカ人を俺は知っています。毎週俺と同じ日の同じ時間帯にレジに列んでいるのを見かけているからです。彼は長身ながらヒョロっとしている訳ではなく、腕・脚・腹のあたりを見るかぎり、それなりに鍛えられているように見えます。涼しくなっても半袖半ズボンは伊達ではありません。
彼はまずポテトを食べていました。一本一本摘んだポテトをはたいてから口に入れています。どう見てもあれは塩を落とす動きです。やはり鍛えていると見込んだ通り、塩分の接種にも気を配っているのです。
食べ終わると、彼はホットコーヒーの蓋を開けました。どうやら食後にコーヒーを嗜む派であるようです。
やはり彼はボストン茶会事件に端を発する米国のコーヒー文化の伝統を汲むアメリカ人であると勝手に確信する俺がいます。
すると、彼はスティックの砂糖を取り出し、サラサラとコーヒーに砂糖を注ぎ込みました。
──!?
米国のコーヒー文化にまで思いを馳せたところで、まさかのストイックに身体を鍛えているように見せかけてからのトリックプレーであります。
どうやら塩からいポテトがお嫌いなのか、血圧を気にしているだけのようです。そもそもマクドに毎週来ている時点でストイックではありませんでした。
こんなに些細なことでこれだけ妄想にふける俺って、最近つくづく楽しいことが無いんだなぁと、残念なことに気付きはじめたので、このへんにしておきます。
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