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10月12日

いつも窓に向かいあう席を愛用している最寄りのマクドナルド。二階からの景色を楽しみながら不節制な昼食を楽しむのが、週に一度の決まった外出なのです。
テレワークとは恐ろしいもので、こうでもしないと本当に引き籠もってしまうのです。

ところが今日は、全体的に見て店内の客の数は少ないものの、窓前の席だけは人で埋まっていました。
仕方がないので、他の客とも向かい合うことになる長テーブルの席に座ることにしました。小テーブル二つ合わせた四人掛け席も空いていたのですが、そこを遠慮するのが私の小者たる所以なのです。

お昼時ということもあり、しばらくすると店内が混んできす。すると、斜め前の席に長身のアメリカ人が座りました。本当の国籍は不明ですが、マクドに欧米人がいれば、俺の目にはすべてアメリカ人として認識されるのです。まぁ昭和を生きた日本人はみなそんなものでしょう。

じつはこのアメリカ人を俺は知っています。毎週俺と同じ日の同じ時間帯にレジに列んでいるのを見かけているからです。彼は長身ながらヒョロっとしている訳ではなく、腕・脚・腹のあたりを見るかぎり、それなりに鍛えられているように見えます。涼しくなっても半袖半ズボンは伊達ではありません。
彼はまずポテトを食べていました。一本一本摘んだポテトをはたいてから口に入れています。どう見てもあれは塩を落とす動きです。やはり鍛えていると見込んだ通り、塩分の接種にも気を配っているのです。

食べ終わると、彼はホットコーヒーの蓋を開けました。どうやら食後にコーヒーを嗜む派であるようです。
やはり彼はボストン茶会事件に端を発する米国のコーヒー文化の伝統を汲むアメリカ人であると勝手に確信する俺がいます。

すると、彼はスティックの砂糖を取り出し、サラサラとコーヒーに砂糖を注ぎ込みました。
──!?
米国のコーヒー文化にまで思いを馳せたところで、まさかのストイックに身体を鍛えているように見せかけてからのトリックプレーであります。
どうやら塩からいポテトがお嫌いなのか、血圧を気にしているだけのようです。そもそもマクドに毎週来ている時点でストイックではありませんでした。

こんなに些細なことでこれだけ妄想にふける俺って、最近つくづく楽しいことが無いんだなぁと、残念なことに気付きはじめたので、このへんにしておきます。


11月26日

スタンプラリーに目がないウチのジローが、『2023 京葉線スタンプラリー』なるイベントを発見した。
見つけた時点ですでに開催中だったこのイベントですが、開催期間がなかなかに短く、11月の1ヶ月間なのだという。 そして今日が11月最後の日曜日、もはやチャンスは今日しかないのだ。

ところが、ここで『子供あるある』が発動した。ジローが熱を出して寝込んだのである。

「仕方ない、俺が一人で回って、ジローへのお見舞いにコンプリート賞の景品を獲ってきてやるか!」
と、なんとなくそうなった。

行くとなると、昼から家を出たのでは帰宅がいつになるか分かったものではないので、午前中に家を出ることにした。 テレビでは、「今日は真冬並みの寒さです!」と伝えている。外に出てみると、雨まで降っていた。もう悪い予感しかしない。

スタンプラリーの対象駅は全部で9つ。我が家からの最寄駅はちょうどそれら対象駅の中間にあたるので、全て巡るには東京方面と千葉方面の両方に行かねばならない。 そこでまずは千葉方面の攻略へ向かい、その終着駅となる曽我駅で昼食を摂ろうと画策した俺は、1時間ほどで最初の3駅を攻略した。 そして、さらに次の駅へ向かうべく駅のホームに立っていたところでその放送は流れた。

「ただ今、新木場〜西葛西間で信号の点検を行っておりますので、京葉線は全線停止しております。復旧の目処は立っておりません!」

ほらまた始まった。
俺が一人で電車に乗ると、いつもコレだ。

念のため20分ほどそのまま待ってみた。とにかく寒い。「この冬イチバンの寒さ」は伊達ではないようだ。 こんなことだけは本当のことを放送するマスコミを恨めしく思いながらホームに立ち続けたが、やがて限界を感じた。

駅員はJR京葉線からバスで移動して、別のJRである総武線に乗って目的地に向かうことを勧めていた。 だが、俺がやっているのは京葉線のスタンプラリーだ。京葉線を使わずにコンプリートを目指せというルール変更は、難易度がバク上がりに過ぎる。

しかし、やたらと復旧の目処が立たないことを強調する駅内放送の繰り返しに心が折れた俺はバスに乗った。
当初の目的地だった千葉方面の終着駅の『蘇我駅』には、総武線経由でもたどり着くことができる。もちろん遠回りになるのだが、そうしている間に京葉線も復旧するかもしれない。

バスから外の景色が見える。
それは残念ながら見知った景色。見えている通りを20分も歩いてゆけば、我が家の前に至る。家を出て2時間以上、なぜ俺は近場を彷徨っているのだろう……

バスから電車2本を乗り継いで、蘇我駅に到着した。取り急ぎスタンプを押してみたが、ラリーの進捗の上がらなさに辟易する。
どうやら京葉線の復旧はまだらしい。もし、あのまま復旧を待っていたら、まだあの駅で凍えていた訳であるから、勝負に勝った気がした。(電車が止まった時点で負けなのだが)

人には『現状維持バイアス』があり、習慣や決めていることを変えるのに抵抗があるという。 意地で蘇我駅までやってきて、当初の予定通りその駅前で昼御飯を食ったことで、バイアスにまみれた俺の心の安定が守られた。

さて、駅に戻ると、京葉線は運転再開していました。
乗り込んだ電車の車内放送で、
「快速と言ってましたが、やっぱり各駅停車にします」 という耳を疑う車内アナウンスをされても、昼食で落ち着いた俺の心はまったく乱れなかった。


ただただ寄り道もせず、改札を出てスタンプを押しては、すぐに改札を入って次の駅を目指して回った。

なお、スタンプラリーのルールにはこう記されています。
「スタンプ設置駅のNewDaysにてSuicaで300円以上お買い物をしよう」
電車賃を払ってはスタンプを押した上に、駅の売店で買い物もしろ、というのがクリア条件なのである。
また、こうも書かれています。
「新習志野駅でのプレゼント引換時間 9:00〜20:00」
ゴール駅の新習志野駅で午後8時がタイムリミットということになります。

そうして日が落ちた17:00、ついに全てのスタンプを揃えて新習志野駅に降り立ったのでした。
改札の外にNewDaysが在ります。そこで最後の買い物に挑もうと思ったら、NewDaysが閉まっています。

―――!?
ゴールができない。
駅員に確認してみると、売店は14:00で閉店したという。

14:00に閉まった!?

20:00までのラリーの開催時間内に買い物をしろというルールにしておいて、ゴール駅の売店を14:00に閉めるとは。 しかも今日はこれまで散々に電車の運行停止でロスタイムを強いられたのだから、間に合う訳がない。

これから別の駅の売店へ買い物をするために改めて電車に乗って旅立つなんて嫌すぎる。 これはいくら何でもと、力なく駅員に話してみると、買い物は免除してくれました。

そんなわけで、手に入れたコンプリート賞がこれでございます。



ここで、今回のスタンプラリーのポスターを紹介しておきます。


そんな中でも、注目はこの部分です。


「新習志野駅は期間限定スタンプだよ!」
と、書かれています。これは、分かりやすく説明すると、
「新習志野駅以外の8駅は、普段から駅に置かれているスタンプをそのまま使い回しているよ!」
という意味です。

そして、コンプリートしたスタンプ台紙がこれです。


スタンプの統一感の無さ、そして何よりインクのかすれているスタンプが目立ちます。
子供と駅スタンプを押すために遠出をすることがあります。しかし、わざわざお金と時間をかけてやって来て押したスタンプがかすれていると、とても残念な気持ちになります。
ましてやスタンプラリーともなれば、スタンプを押して回るイベントと称して乗客を呼んでいるわけです。そのスタンプのインクがかすれているとはどういう了見か。 台紙の印刷にはお金をかけたのでしょうが、多くの人はスタンプを押した台紙を記念に取っておくはずです。なぜイベントに際してスタンプのメンテナンスをしない?

鉄道会社さま、これからも電車に乗りますので、どうかスタンプとインクのお手入れをお願いいたします。


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